ISMAP に登録されている AI はあるのか — 登録の行と、監査の範囲は別の単位
「官公庁に出すので、ISMAP に登録された AI はありますか」と聞かれます。答えはあります。ただし、どこを見て数えるかで答えが変わります。
登録されるのは「行」、監査が及ぶのは「範囲」
ISMAP のクラウドサービスリスト は、1 行が 1 つの登録です。編集部が 2026-09-13 に数えたところ 103 件でした(リストは 2026/08/28 更新版)。
| 見るところ | 何が分かるか | 分からないこと |
|---|---|---|
| クラウドサービスの名称 | どの登録があるか | その中のどの機能が対象か |
| 生成AIに関する情報の欄 | 生成 AI の開示があるか | 開示の中身 |
| 言明の対象範囲 | 監査が及ぶ機能の範囲 | — |
名称に AI が入っている行は 2 件だけです。 けれども、それで「登録された AI は 2 件」と数えると間違えます。生成 AI は、AI という名前ではない行の内側にも入っているからです。
生成AIに関する情報の欄は、3 つに分かれます。
| 欄の値 | 件数 |
|---|---|
| 開示の文書がある | 23 |
| 無 | 66 |
| 「言明の対象範囲」を参照 | 14 |
3 行目の 14 件に、主要な基盤が入っています。この項目が「範囲の文書を見てください」と言っている以上、表だけでは答えが出ません。
例 1 — 行の内側に、生成 AI が名前で入っている
Google は、範囲に入る製品を 自社の公開ページ で製品名まで列挙しています(5 つの群に分けて)。その中に、生成 AI の製品が名指しで入っています。
| 群 | 範囲に入っていると書かれている生成 AI の例 |
|---|---|
| Google Cloud | 「Vertex AI 上の生成 AI(旧 Vertex AI での生成 AI のサポート)」 |
| Google Cloud | 「Vertex AI Platform(旧称 Vertex AI)」「Vertex AI Search」「Vertex AI Conversation」 |
| Google Cloud | 「Google Cloud の Duet AI」 |
リストの行の名前は「Google Cloud Platform」で、AI という語は入っていません。 中身を見に行かないと、生成 AI が対象に入っていることは分かりません。
そして逆方向もあります。同じ会社の Gemini は、この製品一覧の中には見当たらず、リストでは別の行として登録されています(名称欄は Gemini Enterprise(Agentspace を含む)および Gemini Notebook Enterprise)。1 社の中でも、行の内側に入るものと、別の行になるものがあります。
例 2 — 範囲を列挙せず、リストに戻される
もう 1 つの型は、ベンダー側が範囲を列挙しない場合です。
| どこを見たか | 書かれていたこと |
|---|---|
| ベンダーの制度紹介ページ | 対象は公式 ISMAP クラウドサービスリストに示されているとおり。挙げられているのは大きな区分の名前だけ |
| ISMAP のリスト | 生成AIに関する情報の欄は「言明の対象範囲」を参照 |
| 言明の対象範囲 | リストのページからリンクされた文書 |
原文はこう書かれています。
「ISMAP 認証の対象となる Microsoft クラウド サービスは、以下の公式 ISMAP クラウド サービス リストに示されているとおりです。」
ここで一周します。 ベンダーはリストを見よと書き、リストは範囲の文書を見よと書く。だから、ある機能が対象かどうかを知るには、調達の担当者自身がその文書を開くことになります。
なお編集部は、この範囲の文書の中身を確認していません。 公開ページからリンクされている文書なので、担当者が自分で開いて確かめられます。
制度側の説明 — 範囲の外の生成 AI も報告させている
制度の説明には、生成 AI の情報を 2 つに分けて 報告させる区分があります。2 番目がこう書かれています。
【2. 言明書に記載している言明の対象外となるサービスのうち、生成AIを含むサービス・機能を提供しているクラウドサービス】 申請対象のクラウドサービスの提供において利用される外部の生成AIサービス・機能を明示することにより、クラウドサービス事業者の内部統制が及ばない範囲や外部依存関係を明らかにし、調達時にサプライチェーンリスクやデータ取扱い等に係るリスクを把握できるようにすることを目的としています。
| この区分が意味すること | 実務でどう効くか |
|---|---|
| 登録されたサービスの中に、監査が及ばない生成 AI が含まれうる | 「ISMAP 登録済み」を機能の安全の保証として使えない |
| その部分は外部への依存として開示される | 依存先がどこかを、調達の段で読める |
| 生成 AI を使っていなければ、提出は不要 | 開示が無いことは、生成 AI が無いことも意味しうる |
編集部は、範囲の外にある生成 AI の実例を持っていません。 範囲の文書を開いていないからです。制度がその区分を置いていることまでが、確かめた範囲です。
こう決める — 官公庁に出すとき
| 順 | 手順 | こう判定する |
|---|---|---|
| 1 | 使う機能の名前を先に決める(基盤ではなく、機能の名前で) | 「クラウドを使う」では照合できない。製品名か機能名まで落とす |
| 2 | リストで、その提供元の行があるかを見る | 行が無ければそこで終わり。行の名前に AI が無くても、次へ進む |
| 3 | その行の生成AIに関する情報の欄を見る | 開示の文書があれば読む。「範囲を参照」なら 4 へ |
| 4 | ベンダーの公開ページに、範囲の製品一覧があるか探す | 製品名で列挙されていれば、そこで照合できる |
| 5 | 無ければ、言明の対象範囲の文書を自分で開く | ここは代行できない。開いて、使う機能名を検索する |
「載っていない」の書き方に注意してください。 リストの名称と事業者名の範囲で見当たらなかった、というのが正確で、他社の基盤の行の内側に入っている可能性は残ります。 行政の届出そのものを自動化できるかは 行政への届出を自動化するか、認証全般の読み方は 第三者認証は何を保証しているのか に置きました。