AI との会話はキャッシュから漏れるのか
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AI に入力した情報は学習に使われるかでは、入力の行き先が 3 つに分かれること(再学習される・人が読む・保存される)を見ました。ここでは、そのうち保存の側にあるもう 1 つの置き場の話です。プロンプト(指示文)のキャッシュといいます。
同じ前置きを繰り返し送るとき、費用と待ち時間を減らすために、送ったプロンプトをそのまま残して使い回す仕組みです。AI との会話がそこに残るので、社内では必ず聞かれます。「他の会社のものと混ざって、うちの会話が漏れることはないのか」。
Anthropic と OpenAI の開発者向け文書を読みました。
組織はまたがない、ただし単位は違う
まず混ざるかどうか。どちらの文書も否定しています。
| 提供元 | 文書に書かれていること |
|---|---|
| Anthropic | どの場合でも、同一の指示文であっても、組織をまたいでキャッシュが共有されることは決して無い Anthropic 開発者向け文書(Prompt caching)原文In every case, caches are never shared across organizations, even for identical prompts.出典を開く確認 2026-09-21 |
| OpenAI | キャッシュは組織をまたいで共有されず、地域の処理境界を越えて再利用されることもない OpenAI 開発者向け文書(Prompt caching・Cache location)原文Caches are not shared across organizations and cannot be reused across regional processing boundaries出典を開く確認 2026-09-21 |
ここは明確です。読みどころは次の節にあります。
分離の単位は、基盤によって変わる
| 動かす基盤 | 分離の単位 |
|---|---|
| Anthropic の API | 作業領域ごとに分離され、同じ組織の中でも作業領域の間でデータが分かれる Anthropic 開発者向け文書(Prompt caching・Cache storage and sharing)原文Caches are isolated per workspace, ensuring data separation between workspaces within the same organization.出典を開く確認 2026-09-21 |
| Amazon Bedrock と Google Cloud | 組織ごとの分離を維持する Anthropic 開発者向け文書(Prompt caching・Cache storage and sharing)原文Bedrock and Google Cloud maintain organization-level cache isolation出典を開く確認 2026-09-21 |
同じ Anthropic の同じ機能でも、どこで動かすかで分離の細かさが違います。
これが効くのは、1 つの組織の中で作業領域を分けている場合です。たとえば部署ごと、あるいは顧客ごとに作業領域を分けているなら、組織ごとの分離しかない基盤では、その分け方はキャッシュには反映されません。
鍵の作り方(Anthropic の文書)
| 項目 | 文書に書かれていること |
|---|---|
| 鍵 | キャッシュの鍵は、指定した地点までの指示文の暗号学的なハッシュから作られる。同一の指示文の要求だけが、特定の蓄えに届く Anthropic 開発者向け文書(Prompt caching)原文Cache keys are generated using a cryptographic hash of the prompts up to the cache control point. This means only requests with identical prompts can access a specific cache.出典を開く確認 2026-09-21 |
同一でなければ届きません。前置きが 1 文字でも違えば、別の蓄えになります。
逆に言えば、同じ前置きを使っている限り、その範囲では共有されます。組織の中でどこまで同じ前置きを使うかは、設計の問題になります。
どれだけ残るか(OpenAI の文書)
| 項目 | 文書に書かれていること |
|---|---|
| 置き場 | キャッシュは、暗号化された値を処理装置の手元の保存領域に、動作中の状態として置くことがある OpenAI 開発者向け文書(Prompt caching・Data retention)原文Prompt caching may store encrypted key/value tensors in GPU-local storage as application state.出典を開く確認 2026-09-21 |
| 既定 | 保持を無しにしていない組織は 24 時間が既定、保持を無しにしている組織はメモリ内のみが既定 OpenAI 開発者向け文書(Prompt caching・Data retention)原文Organizations without Zero Data Retention enabled default to 24h . Organizations with Zero Data Retention enabled default to in_memory .出典を開く確認 2026-09-21 |
2 行目が確かめどころです。自社の契約がどちらの状態かで、既定が変わります。
こう確かめる
| 順 | 何をするか | どこを見るか |
|---|---|---|
| 1 | どの基盤で動かしているかを確かめる | 自社の構成、委託先の構成 |
| 2 | その基盤での分離の単位を確かめる | 提供元の開発者向け文書 |
| 3 | 作業領域の分け方と一致するかを見る | 部署ごと、顧客ごとの分け方 |
| 4 | 残る時間の既定を確かめる | 自社の保持方針の設定 |
聞き方はこうなります。
「私たちが使っている基盤では、キャッシュは何ごとに分かれますか。作業領域ごとですか、組織ごとですか。既定でどれだけ残りますか。」
2 つ目に答えられないまま「組織は混ざりません」と言われても、社内の分け方が守られるかは分かりません。
ここから先は調査の詳細です(約 1 分)。上のカードだけで決められます。調べた 1 件ずつの記録は IT連携マップ に、出典 URL と調査日つきで公開しています。
調査の詳細
調べた範囲は、2 社の開発者向け文書のうち、キャッシュの保存と共有、保持について書かれている部分です。対象は公開されている文書の記述で、実際に混ざらないことをこちらで確かめてはいません。文書を保存し、引用はすべて保存した原本に原文のまま在ることを確かめています。調べていないことは、記述どおりに動いているかの検証です(外から確かめる手段がありません)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出典 | 2 社の開発者向け文書(キャッシュの項) |
| 読んだ部分 | 保存と共有、鍵の作り方、保持 |
| 引用 | 7 本(すべて保存した原本に原文のまま在ることを確認) |
| 確認時期 | 2026 年 9 月 21 日 |
| 含まれないもの | 他社の実装、記述どおりに動いているかの検証 |
開発者向け文書は更新が速い部分です。ここに書いた単位や既定は、確認した時点のものになります。実際に設計するときは、その時点の文書を開いてください。
入れたものが学習に渡る経路については 学習のパイプライン、記録がどこに残るかは AI に入れた会話のログは誰が見るか に置いています。