「訴えられたら補償」の裏条件は何か
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生成 AI の出力で著作権の問題が起きたら誰が責任を負うのか。営業の場でよく聞かれます。
「提供元が補償します」という答えが返ってくることがあります。条文を読むと、補償の一文の直後に除外が並んでいます。
ある提供元の法人向け契約を、除外まで読みました。
補償と除外は、同じ条文に並んでいる
補償の一文はこうです。サービスが第三者の知的財産権を侵害するという請求について、合理的な弁護士費用を含む負債・損害・費用について、顧客を補償し、防御し、免責することに同意する。 出典を開く確認 2026-09-21OpenAI Services Agreement(2026 年 1 月 1 日発効・§13.1)原文
OpenAI agrees to indemnify, defend, and hold Customer harmless against any liabilities, damages and costs (including reasonable attorneys’ fees) payable to a third party arising out of a Claim alleging that the Services infringe any third-party IP Right.
そしてその直後に、除外が続きます。
除外は 4 つ
| 除外 | 何が外れるか |
|---|---|
| ① 組み合わせ | 提供元またはその代理で提供されたものではない製品・サービス・ソフトウェアとの組み合わせ OpenAI Services Agreement(2026 年 1 月 1 日発効・§13.1)原文This excludes claims to the extent arising from: (a) combination of any Services with products, services, or software not provided by OpenAI or on OpenAI’s behalf; (b) modification of any Services by any party other than OpenAI; (c) Customer Content; (d) Customer Applications出典を開く確認 2026-09-21 |
| ② 変更 | 提供元以外の当事者によるサービスの変更 OpenAI Services Agreement(2026 年 1 月 1 日発効・§13.1)原文This excludes claims to the extent arising from: (a) combination of any Services with products, services, or software not provided by OpenAI or on OpenAI’s behalf; (b) modification of any Services by any party other than OpenAI; (c) Customer Content; (d) Customer Applications出典を開く確認 2026-09-21 |
| ③ 顧客コンテンツ | 顧客コンテンツに起因する請求 OpenAI Services Agreement(2026 年 1 月 1 日発効・§13.1)原文This excludes claims to the extent arising from: (a) combination of any Services with products, services, or software not provided by OpenAI or on OpenAI’s behalf; (b) modification of any Services by any party other than OpenAI; (c) Customer Content; (d) Customer Applications出典を開く確認 2026-09-21 |
| ④ 顧客アプリケーション | 顧客アプリケーションに起因する請求 OpenAI Services Agreement(2026 年 1 月 1 日発効・§13.1)原文This excludes claims to the extent arising from: (a) combination of any Services with products, services, or software not provided by OpenAI or on OpenAI’s behalf; (b) modification of any Services by any party other than OpenAI; (c) Customer Content; (d) Customer Applications出典を開く確認 2026-09-21 |
③ が効きます。この契約で顧客コンテンツとは、入力と出力の両方を指します。つまり入れたものが原因で起きた請求は、その範囲で補償の外です。
① も業務では効きます。AI を単体で使うことは少なく、自社の仕組みに組み込むのが普通だからです。組み込んだ結果として起きた請求は、その範囲で外れます。
保証と補償は、別の条文
| 条文 | 書かれていること |
|---|---|
| 免責事項 | サービスは現状有姿で提供される OpenAI Services Agreement(2026 年 1 月 1 日発効・§12.2)原文THE SERVICES ARE PROVIDED “AS IS.”出典を開く確認 2026-09-21 |
| 同じ条文 | 商品性、特定用途への適合性、非侵害についての保証を含め、いかなる種類の保証も行わない OpenAI Services Agreement(2026 年 1 月 1 日発効・§12.2)原文MAKE NO WARRANTY OF ANY KIND, WHETHER EXPRESS, IMPLIED, STATUTORY OR OTHERWISE, INCLUDING WARRANTIES OF MERCHANTABILITY, FITNESS FOR A PARTICULAR USE, OR NON-INFRINGEMENT.出典を開く確認 2026-09-21 |
非侵害を保証しないと書いたうえで、侵害の請求について補償すると書いています。矛盾ではありません。
保証は「侵害しません」という約束で、補償は「訴えられたら費用を持ちます」という約束です。前者はしないが後者はする、ただし除外つき、という構造になっています。
補償を受けると、主導権が移る
| 項目 | 書かれていること |
|---|---|
| 防御の主導権 | 弁護士の選任を含め、請求の防御と和解について、補償する側に単独の決定権を委ねる OpenAI Services Agreement(2026 年 1 月 1 日発効・§13.4)原文allow the indemnifying party sole control of defense and settlement of the claim including selection of counsel出典を開く確認 2026-09-21 |
補償は無条件の権利ではなく、手続きが付いています。自社で争い方を選びたい場合は、この点が効きます。
金額の上限
| 項目 | 書かれていること |
|---|---|
| 原則 | 各当事者の責任総額は、責任の原因となった事由の直前 12 か月間に顧客が支払った総額を超えない OpenAI Services Agreement(2026 年 1 月 1 日発効・§14.2)原文EACH PARTY’S TOTAL LIABILITY UNDER THE AGREEMENT WILL NOT EXCEED THE TOTAL AMOUNT CUSTOMER PAID TO OPENAI DURING THE TWELVE MONTHS IMMEDIATELY PRIOR TO THE EVENT GIVING RISE TO LIABILITY.出典を開く確認 2026-09-21 |
| 補償の扱い | サービス固有の規約に基づく補償は、責任の上限の対象としない OpenAI Services Agreement(2026 年 1 月 1 日発効・§13.1)原文is not subject to any liability cap出典を開く確認 2026-09-21 |
上限があること自体は珍しくありません。読みどころは、補償がその上限の外に置かれていることです。除外に当たらなければ、支払額とは無関係に守られます。
逆に言えば、除外に当たるかどうかで結果が大きく変わります。だから除外を先に読みます。
こう確かめる
| 順 | 何をするか | どこを見るか |
|---|---|---|
| 1 | 補償の一文ではなく、除外の一覧を先に読む | 補償の条項の後半 |
| 2 | 顧客コンテンツの定義を確かめる | 定義の条項。入力と出力の両方が入るか |
| 3 | 自社の組み込み方が除外に当たらないかを見る | 組み合わせと変更の除外 |
| 4 | 防御の主導権が誰に渡るかを確かめる | 手続きの条項 |
聞き方はこうなります。
「補償の除外は何ですか。私たちが入れた内容が原因の場合は外れますか。自社の仕組みに組み込んだ場合はどうですか。訴えられたとき、弁護士は誰が選びますか。」
ここから先は調査の詳細です(約 1 分)。上のカードだけで決められます。調べた 1 件ずつの記録は IT連携マップ に、出典 URL と調査日つきで公開しています。
調査の詳細
調べた範囲は、ある提供元の法人向けサービス契約 1 本のうち、補償・保証・責任制限の条項です。対象はその条文で、他社の契約との比較は行っていません。契約書を保存し、引用はすべて保存した原本に原文のまま在ることを確かめています。調べていないことは、この条項が実際に争われた事例です(適用のされ方は、この調べの外にあります)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出典 | ある提供元の法人向けサービス契約(2026 年 1 月 1 日発効) |
| 読んだ条項 | 補償、保証および免責事項、責任の制限、手続き |
| 引用 | 7 本(すべて保存した原本に原文のまま在ることを確認) |
| 確認時期 | 2026 年 9 月 21 日 |
| 含まれないもの | 他社の契約、実際の適用事例、個人向けの条件 |
1 社の契約なので、これが業界の標準というわけではありません。ここで読み取れるのは、補償条項にどういう形の除外が置かれるかという構造です。他社の契約を読むときも、除外の位置と顧客コンテンツの定義を先に見れば、同じ形で比べられます。
学習が合法とされる根拠については 「学習は原則合法」の根拠は何条か に置いています。