長い資料は貼るか、ファイルで渡すか — トークンを測った
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長い参考資料や業務データを AI エージェントに渡すとき、「チャット画面にそのまま貼り付けるべきか」「ファイルとして保存して読み込ませるべきか」は多くの利用者が迷うポイントです。
「ファイルで渡せばトークンが節約できる」という言説がありますが、実際にはどのような違いがあるのか、IT連携マップ編集部が実機検証とトークン測定を行いました。
ファイルで渡すと、AI モデルには何が届くのか?
各製品でプロンプト中に @ファイル名 と記述した際の実際の挙動は以下のとおりです。
| AI エージェント | @ でファイルを指定したときの動作 |
|---|---|
| Claude Code | ファイルの中身をその場でチャットメッセージ内に展開(最大 25,000 トークンまで) Claude Code Docs(common-workflows)原文This includes the content of the file in the conversation when it fits the Read tool's token limit, 25,000 tokens by default.出典を開く確認 2026-10-18 |
| Codex | ファイルの場所(パス)をプロンプトに付け、モデルがツールで読む OpenAI Codex Docs(developer-commands)原文Type @ to search for a file in the workspace and add its path to the prompt.出典を開く確認 2026-10-18 |
| Antigravity の CLI | ファイルの絶対パスをプロンプトに付与し、モデルがツールで読み込み Google Antigravity Docs(best-practices)原文Highlighting and selecting a path imports the absolute workspace file path directly into your prompt.出典を開く確認 2026-10-18 |
いずれの場合も、一度ツールによって読み込まれたファイルの中身は「会話履歴(Tool calls)」として記録されます。そのため、その後のターンでも毎回、コンテキストの一部として AI モデルへ送られます(コンテキストとは)。
会話に貼る場合と比べて、トークンはどう違うのか?
IT連携マップ編集部は、総務省白書の 2,893 文字の文章について、「チャットに直接貼り付ける方法」と「ファイル(article.md)として置いて読ませる方法」のそれぞれで、文章の書き直しと追加の修正の命令(計 2 ターン)を実行させました。
2 ターンの累計入力トークン数(中央値)は以下のとおりです。
| AI エージェント | 会話に直接貼る | ファイルで渡す | うちキャッシュから読み取らなかった分(貼る → ファイル) |
|---|---|---|---|
| Claude Code(Claude Fable 5.1) | 54,170 | 74,564 | 21,280 → 22,351 |
| Claude Code(Claude Haiku 5.5) | 55,041 | 72,793 | 23,227 → 22,698 |
| Antigravity の CLI(Gemini 4 Argon) | 46,977 | 70,551 | 28,707 → 47,104 |
なぜファイルで渡した方が約 2 万トークンも増えるのか?
ファイルで渡すと、AI エージェントはファイルを読むツールを呼び出します。このために AI モデルを呼ぶ回数が 1 回増え、そのたびにシステムプロンプトやツールの説明を含むコンテキスト全体がもう一度送られるからです。
ただし Claude Code では、増えた分の大部分がキャッシュから読み取られました(料金は通常の 1 割以下)。キャッシュから読み取らなかった分は、貼る場合とファイルの場合でほぼ同じでした。
Antigravity の CLI では、資料を article.md で渡すと、モデルが書き直した文をファイルに書き込もうとしたり、コマンドを実行しようとしたりしました。この試験はファイルの書き込みとコマンドの実行を許していないため、止められて 1 ターン目の返事が空になりました(Gemini 3.8 Flash Low で 6 回中 5 回、Gemini 4 Argon で 3 回中 1 回)。
ファイルを活用すべきなのは、どのような場面か?
トークンが増えるにもかかわらず、なぜ実務ではファイルが重宝されるのでしょうか。理由は以下の 4 点にあります。
| 活用場面 | ファイルにする強力なメリット |
|---|---|
| 何度も推敲・修正を繰り返す文書 | 書き直した結果をファイルに直接保存させれば、会話に長い出力が何度も並ばず、会話履歴が大きくならない |
| 長大なプログラムや集計表の出力 | 会話画面に出力させると次ターン以降の入力トークンが跳ね上がるが、ファイル出力なら参照時のみの消費で済む |
| チーム内での共同作業・版管理 | 貼り間違いが無く、Git などで変更の差分(diff)を追える |
| 巨大ドキュメントのピンポイント参照 | 必要なセクションのみをツールで抽出して読ませることが可能になる |
何をチャットに、何をファイルに置くべきか?
| 情報の種類 | 最適な置き場所 | 理由 |
|---|---|---|
| その場限りの短い質問・作業指示 | チャットメッセージ | 直接入力が最も手数が少なく、ツール呼び出しのオーバーヘッドもない |
| 毎回必ず守らせたい共通規約 | 指示ファイル(AGENTS.md とは) | 製品が読むファイル名なら、毎回の会話に全文が届く |
| たまにしか行わない作業の手順 | スキル(AI のスキルとは) | 普段のコンテキストを圧迫せず、必要な瞬間だけ読み込める |
| 長文資料・推敲対象の原稿・巨大な成果物 | ファイル(Markdown / テキスト) | ファイルを直接編集させれば、会話履歴が大きくならない |
置き場所ごとの遵守率とトークン効率の比較は、指示はどこに書くか で詳細に検証しています。
ここから先は調査の詳細です(約 1 分)。上のカードだけで決められます。調べた 1 件ずつの記録は IT連携マップ に、出典 URL と調査日つきで公開しています。
調査の詳細
IT連携マップ編集部は 2026 年 10 月に、同一の白書文章(2,893 文字)を対象として、直接貼り付けとファイル渡し(article.md)の 2 パターンで書き直しタスクを実施しました。
| 検証項目 | 詳細条件 |
|---|---|
| 直接貼り付けの送り方 | 資料本文、書き方の指定 8 項目、命令文を単一のプロンプトで送信 |
| ファイル渡しの送り方 | 資料を article.md に置き、「article.md の文章を、【書き方の決まり】に従って書き直してください。」と書き方の指示 8 項目を送信 |
| 2 ターン目の指示 | 「3 段落目をもっと短くしてください。書き方の決まりは同じです。」 |
| 試行回数 | 各 3 回(Gemini 4 Argon は使用量制限のため 2 回) |
Claude Code はファイル渡しの 3 試行すべてでツールによるファイル読み込みを実行しました。書き方の指定 8 項目に対する遵守率は、直接貼り付け・ファイル渡しのいずれにおいても、Claude Fable 5.1 および Gemini 4 Argon が満点(8点)を達成しました。