AI に資料と指示を渡す 6 つの方法と推奨順序
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AI エージェント(Claude Code、Antigravity CLI、Cursor など)に資料を読ませて作業を頼むとき、2 ターン目で「さっきの資料をもう一度貼り直して、ここを直して」と指示していませんか。貼り直した資料は、プロンプトキャッシュで安く読めるはずの分を、もう一度普通の料金で払うことになります。IT連携マップ編集部の測定をもとに、資料と指示の 6 つの渡し方と、置き場所の推奨順序を解説します。
AI に資料と指示を渡す 6 方式(UI 図解)
| 方式名称 | 事前準備ファイル | Turn 2 の指示 |
|---|---|---|
| 1a 会話に2回貼り付け | なし | 資料本文をもう一度貼り直して修正を指示 |
| 1b 会話貼付と参照指示 | なし | 「先の文章」と参照指示だけ |
| 2 資料を外部ファイルに | article.md |
article.md の 3 段落目を短くしてと指示 |
| 3 指示をSKILLに | SKILL(執筆手順) |
先の文章を SKILL で短くしてと指示 |
| 4 指示をAGENTS.mdに | AGENTS.md(常駐ルール) |
先の文章と参照指示だけ |
| 5 資料ファイル+SKILL | article.md + SKILL |
article.md を SKILL で短くしてと指示 |
Turn 1 では、1a・1b・3・4 は資料本文をプロンプトに貼り、2・5 は article.md を読ませます。
資料をもう一度貼り直してはいけない理由
プロンプトキャッシュは、前の問い合わせと先頭から一致する部分だけを再利用します。2 ターン目に資料を貼り直すと、貼った分は後ろに足された新しい入力になり、普通の料金で数えられます。編集部の測定では、貼り直した分は短文で 2,090 トークン、長文で 20,330 トークンでした。長文では、参照指示だけの 1b が貼り直した 1a より 34% 安くなりました(数と条件は下の「調査の詳細」)。
指示や資料はどこに置くのが最も効率的か?(推奨順序)
| 順番 | 置くもの | 置き場所 | 理由 |
|---|---|---|---|
| Step 1 | チーム共通ルール | AGENTS.md / GEMINI.md |
会話の始めに読まれて先頭に固定され、毎ターンキャッシュから読まれる(AGENTS.md とは) |
| Step 2 | 専門業務の手順 | SKILL(.agents/skills/) |
普段は名前と説明文だけ、その作業の時だけ本文を読む(AI のスキルとは) |
| Step 3 | 作業対象の資料 | 外部ファイル(article.md 等) |
会話に資料の本文を残さず、2 ターン目以降の新しい入力を小さくする |
| Step 4 | 今回の命令 | ユーザープロンプト | 命令と参照だけ。2 ターン目以降は資料を貼り直さない |
まとめ・チェックリスト
| 確かめること | はい なら |
|---|---|
毎回守らせるルールは AGENTS.md に書いたか |
Step 1 済み |
たまにしか使わない専門手順は SKILL に分けたか |
Step 2 済み |
読ませたい資料は外部ファイル(.md や .txt)として用意したか |
Step 3 済み |
| 2 ターン目以降に、資料や前の出力を貼り直していないか | Step 4 済み |
測定の全データは「資料と指示を渡す 6 方式のトークン測定と費用(実験編)」で公開しています。
ここから先は調査の詳細です(約 6 分)。上のカードだけで決められます。調べた 1 件ずつの記録は IT連携マップ に、出典 URL と調査日つきで公開しています。
調査の詳細
IT連携マップ編集部は、Google Antigravity CLI(agy)で、Claude Sonnet 5.5 と Gemini 3.8 Flash に 6 つの渡し方で同じ課題を出しました。短文(2,893 字)は 8 つの決まりで書き直し、長文(39,875 字)は 300 字程度に要約して書き直し、2 ターン目はどちらも 3 段落目を短くさせました。試行ごとに作業場所を新しくし、各条件 1 回測りました。費用は、測ったトークンの数を公式の料金(1M トークンあたり、Claude Sonnet 5.5: 入力 $2・キャッシュ読み出し $0.10・出力 $10、Gemini 3.8 Flash: $0.75・$0.075・$3.75)で換算した値です。
貼り直しの測定の差
| ターン | 1a 会話に2回貼り付け | 1b 会話貼付と参照指示 | キャッシュへの影響 |
|---|---|---|---|
| Turn 1 | 【指示】+【白書本文】を送信 | 【指示】+【白書本文】を送信 | 両者とも同じ初期コンテキスト |
| Turn 2 | 「修正して」+もう一度【白書本文】を貼り付け | 「先の文章 の 3 段落目を短くして」とだけ送信 | 1a は貼った分がキャッシュの外 1b は前の内容をキャッシュから読む |
| 測定の差 | キャッシュの外の入力: 8,606 トークン(長文 22,784) | キャッシュの外の入力: 6,516 トークン(長文 2,454) | 短文 2,090・長文 20,330 トークン(貼り直した資料の分) |
Claude Sonnet 5.5 の短文では、2 ターン目にキャッシュの外で払った入力の差は 2,090 トークン($0.0042)でした。費用の差の大部分は出力です。資料を貼り直された AI は全文(3,103 字)を書き直し、2 ターン目の出力は 3,290 トークンで、3 段落目(127 字)だけを返した 1b の 8 倍でした。2 ターンの費用は 1a が $0.1025、1b が $0.0740(1a 比 -28%)です。
Gemini 3.8 Flash の長文では、差は 20,330 トークンでした。2 ターン目の入力のうちキャッシュから読まれた割合は、1a が 58%、1b が 92% で、2 ターンの費用は 1b が 1a より 34% 安くなりました。
時間と会話の要約の落とし穴
| 落とし穴 | 公式の説明 | 対策 |
|---|---|---|
| キャッシュの保持時間(TTL)が切れる | Claude のサブスクリプション(プランの範囲内)の会話は 1 時間、API キーやクラウド経由は 5 分(Claude Code の公式) | 切れると、読み出し(入力の 0.05 倍)だった履歴がもう一度書き込まれる(1.25〜2 倍)。同じ履歴の費用が API の料金で 25〜40 倍になる |
| 会話の要約(compaction)で資料の細部が消える | 要約の後、最近読んだり書いたりしたファイルを最大 5 つ読み直す。5,000 トークンを超えるファイルは中身なしのパス(Referenced file)で戻る(Claude Code の公式) |
資料は外部ファイルに置く。会話に貼った資料は要約にまとめられるが、ファイルなら view_file 等で読み直せる |
短文と長文で「最安の方式」が入れ替わる仕組み
| 方式名 | Claude 短文(2 ターン) | Gemini 短文(2 ターン) | Gemini 長文(2 ターン) | 特性と評価 |
|---|---|---|---|---|
| 1a 会話に2回貼り付け | $0.1025(最高) | $0.0236(最安) | $0.0444(基準) | × 非推奨: 貼った分がキャッシュの外。長文で最も差が出る |
| 1b 会話貼付と参照指示 | $0.0740(1a 比 -28%) | $0.0262(+11%) | $0.0292(-34%) | ◯ 簡易向け: 準備ゼロで安い。手軽な確認に最適 |
| 2 資料を外部ファイルに | $0.0914(-11%) | $0.0483(+105%) | $0.0256(最安・-42%) | ◎ 長文向け: キャッシュが当たらない短文では割高 |
| 3 指示をSKILLに | $0.0755(-26%) | $0.0325(+38%) | $0.0326(-26%) | ◎ 強く推奨: 普段は名前と説明文だけ、必要な時だけ本文を読む |
| 4 指示をAGENTS.mdに | $0.0713(最安・-30%) | $0.0549(最高) | $0.0452(最高) | ◎ 必須基盤: ツールの往復なし。Gemini では考えるトークンが多く出た |
| 5 資料ファイル+SKILL | $0.0901(-12%) | $0.0359(+52%) | $0.0365(-18%) | ◎ ベスト構成: 2 ターン目の新しい入力は少ない。1 ターン目の往復が重い |
短文では資料が小さいので、貼り直しても参照しても入力の差は小さく、ツールの往復で増える 1 ターン目の入力のほうが目立ちます。Claude では 4($0.0713)と 1b($0.0740)がほぼ同じで最も安く、キャッシュが 1 度も当たらなかった Gemini では、ファイルを読む 2 が 1a の約 2 倍になりました。
資料が 3 万トークンを超えると、会話に貼るか、貼り直すかの差が費用を左右します。2 は 1 ターン目も 2 ターン目も入力が最も少なく、2 ターンの費用は $0.0256(1a 比 -42%)で最も安くなりました。1b との差は 1 割ほどです。
ツールの往復で 1 ターン目がどれだけ増えたか
エージェントが外部ファイル(view_file)や SKILL.md を読むとき、ツールを使うたびに、それまでの内容をもう一度モデルに送ります。ツールを使わない 1b を基準に、Claude の短文で計算した結果です(詳細は 実験編 参照)。
| 方式 | 1 ターン目の入力の合計の増加 | 入力の費用の増加 |
|---|---|---|
| 2 資料を外部ファイルに | +35,180 トークン(+206%) | +$0.0160(+67%) |
| 3 指示をSKILLに | +17,446 トークン(+102%) | +$0.0080(+34%) |
| 4 指示をAGENTS.mdに | +92 トークン | +0.8% |
| 5 資料ファイル+SKILL | +36,034 トークン(+211%) | +$0.0115(+48%) |
Claude では、増えた分の多くがキャッシュから読まれるので、トークンが 2〜3 倍になっても入力の費用は 1.3〜1.7 倍で済みました。キャッシュが当たらなかった Gemini の短文では、増えた分をそのまま払うことになり、方式 2 の 2 ターンの費用は 1a の約 2 倍でした。
会話中にキャッシュを無駄にしない 3 つの鉄則
鉄則 1: 参照指示を使い、対象のタイトル・見出しを明確に指定する
AI はこれまでの会話履歴を持っています。「先ほど出力した要約の 2 行目を〜」と指示すれば通じるので、貼り直しはやめましょう。ただし会話が長くなったり複数の資料を扱ったりすると、「先の文章」がどれを指すのか曖昧になります。実務では「先ほど生成した『総務省白書 令和5年版要約』の第3段落を〜」や「『article.md』の第3段落を〜」のように、タイトル・見出し・対象物を名指しした参照指示にすると、資料を払い直さずに、どこを直すかも AI に正しく伝わります。
鉄則 2: 指示ファイルを直したら、新しい会話で
Claude Code の公式の説明では、プロジェクトの CLAUDE.md(と AGENTS.md)は会話の始めに 1 度だけ読み込まれます。会話の途中で書き換えてもキャッシュは切れませんが、書き換えた内容もその会話には届きません。直した指示は /clear・/compact・新しい会話の後に読み込まれます。
鉄則 3: キャッシュが使える最小の長さと「当たらないこと」を知る
キャッシュが使える最小の長さは、Claude Sonnet 5.5 が 512 トークン、Gemini 3.8 Flash の暗黙のキャッシュが 4,096 トークンです(公式)。ただし Gemini の暗黙のキャッシュは当たる保証が無く、今回の短文の測定(1 回の問い合わせが 1 万トークン以上)では 1 度も当たりませんでした。費用は、使った後の usage(キャッシュから読んだトークンの数)で確かめてください。