指示はどこに書くか — 会話・AGENTS.md・SKILL
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AI エージェントに守らせたいルールや手順、参考資料があるとき、「チャット画面に貼る」「指示ファイル(AGENTS.md など)に書く」「SKILL(スキル)にする」「ファイルとして置く」のどれを選ぶべきでしょうか。
「置き場所によって AI が言うことを聞かなくなるのか」「トークン消費はどう変わるのか」について、IT連携マップ編集部が同一タスクを 6 つの条件で実機検証した結果を解説します。
4 つの置き場所は、AI への届き方がどう違うのか?
| 置き場所 | AI モデルへの届き方 | 特徴と詳細解説 |
|---|---|---|
| 会話(チャット入力) | 入力したターンから、その会話が続く限り毎ターン送信される | その場限りの単発指示に最適。プロンプトとは |
| 指示ファイル(AGENTS.md など) | セッション起動時に全文が読み込まれ、毎ターン自動送信される Claude Code Docs(best-practices)原文CLAUDE.md is loaded every session, so only include things that apply broadly.出典を開く確認 2026-10-18 |
常に守らせたい共通規約に最適。AGENTS.md とは |
| SKILL(スキル) | 普段は説明(description)だけ。必要な実行時に本文を展開し、以降は送信され続ける Claude Code Docs(skills)原文Once a skill loads, its content stays in context across turns, so every line is a recurring token cost.出典を開く確認 2026-10-18 |
たまに使う専門手順に最適。AI のスキル(SKILL)とは |
| ファイル(参照資料) | AI がツールで読み込んだ時点でコンテキストに入り、以降は送信され続ける | 長文資料や成果物の保存に最適。ファイルの活用 |
置き場所で、指示への従い方は変わったか?
結論から言うと、デフォルトモデル(Claude Fable 5.1 や Gemini 4 Argon)では、置き場所による差はありませんでした。
IT連携マップ編集部が、文章の書き方の指示 8 項目を与えて試したところ、結果は以下のとおりでした。
| モデル | 6 つの置き方における遵守スコア(8 点満点) |
|---|---|
| Claude Fable 5.1 | すべての置き方で 8 点(3 回とも) |
| Gemini 4 Argon | 正常に応答した回はすべて 8 点満点 |
| Claude Haiku 5.5(小さいモデル) | 7.3〜8 点。3 回とも 8 点だったのは指示ファイルに書いたときだけ(差は 1 点未満) |
| Gemini 3.8 Flash Low(小さいモデル) | 正常に応答した回はすべて 8 点満点 |
この試験では、デフォルトモデルは、会話に直接貼っても、指示ファイルに書いても、SKILL やファイルに分けても、指示に全部従いました。Claude Haiku 5.5 の置き場所による差は 1 点未満で、回す前に決めた「差がある」の条件(平均の差が 1 以上)には届きませんでした。
※なお、資料をファイル(article.md)として渡した場合、Antigravity CLI は修正後の長文を直接ファイルへ書き込もうとしたり、シェルコマンドで保存しようとしたりしました。この試験はファイルの書き込みとコマンドの実行を許していないため、止められて 1 ターン目の返事が空になりました(Gemini 3.8 Flash で 6 回中 5 回、Gemini 4 Argon で 3 回中 1 回)。実務でファイルを扱う際は、エージェントに必要な権限(ファイル書き込み権限等)が付与されているか確認が必要です。
置き場所で、トークンはどれだけ変わったか?
2 ターンの会話における総入力トークン数(中央値)の比較は以下のとおりです。
| 置き方 | Claude Code(Claude Fable 5.1) | うちキャッシュから読み取らなかった分 | Antigravity CLI(Gemini 4 Argon) |
|---|---|---|---|
| 会話に直接貼る | 54,170 | 21,280 | 46,977 |
| 指示ファイル(AGENTS.md) | 55,536 | 20,057 | 55,990 |
| 資料を別ファイルにする | 74,564 | 22,351 | 70,551 |
| 指示を SKILL にする(スキル名を明示) | 76,334 | 21,553 | 67,127 |
指示ファイルに書く場合と、会話に直接貼る場合の総トークン数はほぼ同等(約 5.4 万〜5.5 万トークン)です。
一方、資料をファイルにしたり、指示を SKILL に切り出したりすると、2 ターンの入力の合計が約 2 万トークン多くなりました。AI がファイルや SKILL を読むためにツールを呼び出し、AI モデルを呼ぶ回数が 2 ターンで 1〜3 回増えるからです。
ただし、Claude Code などのプロンプトキャッシュに対応した環境では、増えた分の大部分はキャッシュから読み取られました。キャッシュから読み取らなかった分は、どの置き方でも約 2 万〜2.4 万トークンで、ほぼ同じでした。キャッシュから読み取った分の料金は通常の 1 割以下なので、料金の差は入力の差よりずっと小さくなります(プロンプトキャッシュとは)。
何をどこに置けばよいか?
情報の性質と頻度に応じて、以下の基準で置き場所を決定します。
| 情報の種類 | 最適な置き場所 | 理由 |
|---|---|---|
| 毎回必ず守らせたい共通規約(コード規則、禁止コマンド、言葉遣い) | 指示ファイル(AGENTS.md) | セッション起動時に全文が届く |
| たまにしか行わない専門業務の手順(デプロイ、障害調査、特定フォーマット出力) | SKILL | 普段のコンテキストを圧迫せず、必要な瞬間だけ自動で読み込まれる |
| 長文の参考資料、何度も手直しする原稿、長大なコードや成果物 | ファイル(Markdown / テキスト) | チャット画面に長文を出力させず、直接ファイルを編集させることで会話履歴の肥大化を防げる |
| その場限りの単発の質問、一度きりの作業の命令 | 会話(チャット入力) | ツール呼び出しのオーバーヘッドがなく、最も少ない操作で素早く完了する |
ここから先は調査の詳細です(約 3 分)。上のカードだけで決められます。調べた 1 件ずつの記録は IT連携マップ に、出典 URL と調査日つきで公開しています。
調査の詳細
IT連携マップ編集部は 2026 年 10 月に、総務省白書の文章(2,893 文字)を対象として、6 つの置き場所パターンで文章の書き直しと追加指示(計 2 ターン)を実行させました(Claude Code 2.1.302、Antigravity CLI 1.4.2)。
1 ターン目は白書文章の書き直し、2 ターン目は「3 段落目をもっと短くしてください。書き方の決まりは同じです。」という追加の命令です。指示に従ったかは、並べ方の試験 と同じ 8 項目(です・ます調、1 文 70 字以内、見出しは「### 」など)を機械で採点しました。
6 つの置き方
| 置き方 | 資料の渡し方 | ルールの置き場所 | 命令文 |
|---|---|---|---|
| 会話に全部 | 会話に直接貼る | 会話に直接貼る | 「【文章】を【書き方の決まり】に従って書き直してください。」 |
| 資料をファイル | article.md に配置 | 会話に直接貼る | 「article.md の文章を、【書き方の決まり】に従って書き直してください。」 |
| 指示を SKILL(名前を明示) | 会話に直接貼る | SKILL(rewrite-rules) | 「rewrite-rules の SKILL を使って、【文章】を書き直してください。」 |
| 指示を SKILL(名前を伏せる) | 会話に直接貼る | SKILL(rewrite-rules) | 「【文章】を、社内の書き方の決まりに従って書き直してください。」 |
| 指示を指示ファイル | 会話に直接貼る | CLAUDE.md / GEMINI.md | 「【文章】を、書き方の決まりに従って書き直してください。」 |
| 資料をファイル・指示を SKILL | article.md に配置 | SKILL(rewrite-rules) | 「rewrite-rules の SKILL を使って、article.md の文章を書き直してください。」 |
結果
遵守スコア(1 ターン目の平均・8 点満点)と、2 ターンの総入力トークン数(中央値)を測った結果は以下のとおりでした。
| 置き方 | Claude Code(Claude Fable 5.1) | Claude Code(Claude Haiku 5.5) | Antigravity CLI(Gemini 4 Argon) | Antigravity CLI(Gemini 3.8 Flash Low) |
|---|---|---|---|---|
| 会話に全部 | 8 点・54,170(3 回) | 7.7 点・55,041(3 回) | 8 点・46,977(2 回) | 8 点・34,577(3 回) |
| 資料をファイル | 8 点・74,564(3 回) | 7.7 点・72,793(3 回) | 8 点・70,551(2 回) | 返事が空(3 回) |
| 指示を SKILL(名前を明示) | 8 点・76,334(3 回) | 7.3 点・72,306(3 回) | 8 点・67,127(1 回) | 8 点・52,659(3 回) |
| 指示を SKILL(名前を伏せる) | 8 点・78,283(3 回) | 7.7 点・75,649(3 回) | 8 点・63,116(1 回) | 8 点・52,724(3 回) |
| 指示を指示ファイル | 8 点・55,536(3 回) | 8 点・55,965(3 回) | 8 点・55,990(1 回) | 8 点・35,092(3 回) |
| 資料をファイル・指示を SKILL | 8 点・76,795(3 回) | 7.7 点・69,337(3 回) | 返事が空(1 回) | 8 点・67,665(3 回・うち空 2) |
※表中の「返事が空」は、Antigravity の CLI のモデルがファイルへの書き込みやコマンドの実行をしようとして、試験の設定(許可していない)で止められた回です。
Claude Code は、資料をファイルにした場合や指示を SKILL にした設定において、すべての試行で正しくツール(ファイル読み込みやスキル展開)を呼び出しました。スキル名を出さなかった場合も、3 回とも SKILL を使いました。Gemini 4 Argon は使用量制限に達したため、回数が 1〜2 回の条件があります。