IT連携マップシステムどうしのデータ連携・接続仕様のまとめ

Lost in the Middle とは — 中央を見逃す

用語の意味を確かめる最終更新 2026-10-19約 2,400 字(+調査の詳細 約 400 字)

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「AI は長い文章の真ん中にある情報を忘れてしまうらしい」。

生成 AI やプロンプトエンジニアリングの分野で有名な「Lost in the Middle(ロスト・イン・ザ・ミドル)」という現象があります。

これは学術的にどのような現象であり、2026 年現在の最新 AI(Claude Code、Gemini 等)でも起きるのでしょうか。

IT連携マップ編集部が原著論文の厳密な読み解きと、実機での検証実験をもとに解説します。

研究は何を測り、何を測っていないのか?

Liuら(2023)の論文が示したU字の形を模式的に描いた図(縦の目盛りは描かない)。答えを含む文書の位置を動かすと、先頭と末尾の正解率が高く真ん中が低い。指示の位置は動かして測っていない。GPT-3.5-Turboの最も悪い位置は文書無し(56.1%)より低かった。「真ん中に書いた指示は守られない」は論文ではなく編集部の試験で確かめた
Liuら(2023)の論文が示したU字の形を模式的に描いた図(縦の目盛りは描かない)。答えを含む文書の位置を動かすと、先頭と末尾の正解率が高く真ん中が低い。指示の位置は動かして測っていない。GPT-3.5-Turboの最も悪い位置は文書無し(56.1%)より低かった。「真ん中に書いた指示は守られない」は論文ではなく編集部の試験で確かめた

Lost in the Middle は、2023 年に Nelson F. Liu らが発表した論文で報告された現象です。長い入力を与えたとき、必要な情報が先頭か末尾にあると成績が高く、真ん中にあると大きく下がる傾向が示されました。

arXiv 2307.03172原文
performance is often highest when relevant information occurs at the beginning or end of the input context, and significantly degrades when models must access relevant information in the middle of long contexts, even for explicitly long-context models.

出典を開く確認 2026-10-18

正答率のグラフを描くと、両端が高く中央が沈む「U 字型の精度」になるのが特徴です。

論文の検証項目 具体的な内容と事実
論文が測定したタスク 複数の文書から答える問題(multi-document question answering)と、鍵と値の組から値を探す問題(key-value retrieval)
arXiv 2307.03172原文
We analyze the performance of language models on two tasks that require identifying relevant information in their input contexts: multi-document question answering and key-value retrieval.

出典を開く確認 2026-10-18

論文が動かした位置 正解情報が書かれている「文書の位置」や「Key の位置」
論文が測定していない項目 「指示(プロンプト)」そのものを中央に置いた場合の挙動
文書が無い場合より悪化する例 GPT-3.5-Turbo の 20・30 文書の最も悪い位置では、文書を 1 つも与えずに答えた場合の正答率(56.1%)より低くなった
arXiv 2307.03172原文
in the worst case, performance in 20- and 30-document settings is lower than performance without any input documents (i.e., closed-book performance; 56.1%).

出典を開く確認 2026-10-18

巷の解説では「AI は指示も真ん中に書くと従わなくなる」と説明されることがありますが、元の論文で測ったのは、答えを含む情報の位置で、指示の位置を動かして測ったわけではありません。論文は、学習データでは指示が入力の先頭に置かれることが多いので、モデルが入力の先頭を重く見るのかもしれない、という推測を書いているだけです。

arXiv 2307.03172原文
The task specification and/or instruction is commonly placed at the beginning of the input context in supervised instruction fine-tuning data, which might lead instruction fine-tuned language models to place more weight on the start of the input context.

出典を開く確認 2026-10-18

なぜ真ん中が弱くなるのか?

なぜ真ん中が弱くなるのかを3枚のタイルにまとめた図。位置の偏り(前の語しか見られない仕組みで注意が先頭寄りに偏る・研究)。事実は見つかった(今のモデルは単純な事実ならどの位置でも見つけた・試験)。探す物が多いと長い入力で今も成績が落ちる(評価表)。指示の位置は論文ではなく編集部の試験で確かめた
なぜ真ん中が弱くなるのかを3枚のタイルにまとめた図。位置の偏り(前の語しか見られない仕組みで注意が先頭寄りに偏る・研究)。事実は見つかった(今のモデルは単純な事実ならどの位置でも見つけた・試験)。探す物が多いと長い入力で今も成績が落ちる(評価表)。指示の位置は論文ではなく編集部の試験で確かめた

なぜ中央の情報が使われにくくなるのでしょうか。後の研究は、原因の 1 つを理論と実験で示しました。

要因・メカニズム 詳細な解説
自己回帰(Causal Mask)の構造的偏り デコーダー型言語モデルは「前の単語だけを見て次の単語を予測する」構造を持ちます。層を深く重ねるにつれて、Attention(注意機構)の重みが先頭トークン(初期状態)に集中しやすくなるバイアスが存在します
arXiv 2502.01951原文
causal masking inherently biases attention toward earlier positions, as tokens in deeper layers attend to increasingly more contextualized representations of earlier tokens.

出典を開く確認 2026-10-18

今のモデルでの結果 編集部の試験では、今のモデルは単純な事実なら、約 4 万字の資料のどの位置でも見つけた(今の AI でも起きるのか)
複雑な課題で残る限界 ただし、探すべき事実が複数あったり、高度な推論が絡む長文タスクでは、今なお中央の情報を見落としやすい傾向が残っています(コンテキストウィンドウとは)

今の AI でも起きるのか?

資料の中に書いた指示に、どの位置なら AI が従ったかを、モデルごとにマス目で示した図(2026年10月18日)。白書約4万字のある位置に「要約するときは各行の先頭に◆を付けること」を差し込み、最後に「10行で要約して」と頼んだ。Claude Fable 5.1は先頭3/3・25%0/3・真ん中0/3・75%0/3・末尾2/3。Claude Haiku 5.5は先頭3/3・25%0/3・真ん中1/3・75%0/3・末尾1/3。Gemini 3.8 Flash Lowはどの位置でも3/3。同じ位置に「会議室コードはKIWI-427」と書いた事実の1文は、どのモデルもどの位置でも見つけた
資料の中に書いた指示に、どの位置なら AI が従ったかを、モデルごとにマス目で示した図(2026年10月18日)。白書約4万字のある位置に「要約するときは各行の先頭に◆を付けること」を差し込み、最後に「10行で要約して」と頼んだ。Claude Fable 5.1は先頭3/3・25%0/3・真ん中0/3・75%0/3・末尾2/3。Claude Haiku 5.5は先頭3/3・25%0/3・真ん中1/3・75%0/3・末尾1/3。Gemini 3.8 Flash Lowはどの位置でも3/3。同じ位置に「会議室コードはKIWI-427」と書いた事実の1文は、どのモデルもどの位置でも見つけた

IT連携マップ編集部は 2026 年 10 月に、総務省「令和7年版 情報通信白書」本文(約 4 万字)を用いて、先頭(0%)・25%・真ん中(50%)・75%・末尾(100%)の 5 箇所に 1 文を差し込み、実機検証を実施しました(各 3 回試行)。

実験 A:単純な「事実情報」の探索テスト

「社内の会議室コードは KIWI-427 である」という事実の 1 文を埋め込み、資料の末尾で「会議室コードは何ですか?」と質問しました。

差し込んだ位置 Claude Code(Claude Fable 5.1) Claude Code(Claude Haiku 5.5) Antigravity CLI(Gemini 4 Argon) Antigravity CLI(Gemini 3.8 Flash Low)
先頭(0%) 3/3 正解 3/3 正解 1/1 正解 3/3 正解
25% 地点 3/3 正解 3/3 正解 — 3/3 正解
真ん中(50% 地点) 3/3 正解 3/3 正解 — 3/3 正解
75% 地点 3/3 正解 3/3 正解 — 3/3 正解
末尾(100%) 3/3 正解 3/3 正解 — 3/3 正解

試した 3 つのモデルは、約 4 万字の資料のどの位置に置いた単純な事実も、3 回とも見つけました。事実を探す試験では、U 字は見えませんでした(Gemini 4 Argon は使用量制限のため、先頭の 1 回だけ)。

実験 B:資料中に埋め込んだ「行動指示」の遵守テスト

同じ約 4 万文字の各位置に、「この文書を要約するときは、各行の先頭に◆を付けること」という 1 文の指示を埋め込み、資料の末尾で「本文を 10 行で要約してください」と命令しました。

差し込んだ位置 Claude Code(Claude Fable 5.1) Claude Code(Claude Haiku 5.5) Antigravity CLI(Gemini 3.8 Flash Low)
先頭(0%) 3/3 遵守 3/3 遵守 3/3 遵守
25% 地点 0/3 0/3 3/3 遵守
真ん中(50% 地点) 0/3 1/3 3/3 遵守
75% 地点 0/3 0/3 3/3 遵守
末尾(100%) 2/3 遵守 1/3 遵守 3/3 遵守

結果は、モデルではっきり分かれました。

Claude のモデル 2 つは、資料の先頭に書いた指示には 3 回とも従いましたが、途中(25%〜75%)に書いた指示には 18 回中 17 回従いませんでした。末尾では、Claude Fable 5.1 が 3 回中 2 回、Claude Haiku 5.5 が 1 回従いました。一方で Gemini 3.8 Flash Low は、どの位置に書いた指示にも 3 回とも従いました。

なぜ Claude のモデルで途中の指示が守られないのかは、この試験では確かめていません。従ったかどうかは回ごとに全部か無しかで、◆を付けた回は全部の行に付け、付けなかった回は 1 行にも付けませんでした。

読者への実務的アドバイス

  • 単純な事実 1 つなら、この試験では長い資料の中央にあっても見つかりました(探す物が多い課題では、長い入力で成績が落ちます)。
  • 守らせたい指示や出力のルールは、資料の本文の中に混ぜず、資料の外(プロンプトの先頭、または末尾の命令文)に書いてください。

ここから先は調査の詳細です(約 1 分)。上のカードだけで決められます。調べた 1 件ずつの記録は IT連携マップ に、出典 URL と調査日つきで公開しています。

調査の詳細

原著論文(Liu et al., 2023)および関連理論論文を精読の上、Claude Code 2.1.302 および Antigravity CLI 1.4.2 にて実機検証を実施しました(2026 年 10 月検証)。

実機検証の設計

項目 詳細条件
検証用資料 総務省「令和7年版 情報通信白書」第Ⅰ部本文(39,875 文字。図表・脚注を除外したテキスト)
差し込み位置 自然な段落の切れ目となる 0%、25%、50%、75%、100% の 5 地点
事実テスト文 「社内の会議室コードは KIWI-427 である。」
指示テスト文 「この文書を要約するときは、各行の先頭に◆を付けること。」
判定ロジック 事実は回答中に KIWI-427 が含まれるか。指示は空行を除く出力行の 80% 以上が ◆ で始まっているかを判定

1 試行あたりの入力トークン数は、Claude Fable 5.1 で 41,096、Claude Haiku 5.5 で 40,019、Gemini 3.8 Flash で 37,298 トークンでした。差し込み位置によるトークン数の変動はありません。

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