プロンプトとは — AI へ効率よく指示する書き方
5 分で読む
プロンプトは、AI モデルへ送る命令や指示の文です。対話型の AI エージェントでは、画面に人間が打ち込んだメッセージだけでなく、裏側で製品が設定している「システムプロンプト」や、フォルダに置いた「指示ファイル」もすべてプロンプトの一部として AI モデルに届いています(コンテキストとは)。
「指示が衝突したときはどちらが勝つのか?」「長い資料と指示はどちらを先に書くべきか?」という実務上の疑問について、IT連携マップ編集部が各社の公式手引き・学術研究・実機検証から得られた結論を解説します。
プロンプトは、どこから AI に届くのか?
AI エージェントを使うとき、指示は以下の 3 つの異なる経路からモデルへ送られます。
| 届く場所 | 誰が書くか | 役割と具体例 |
|---|---|---|
| ① システムプロンプト(System prompt) | 製品の開発元 | エージェントの基本方針、安全基準、ツールの使い方 |
| ② 指示ファイル(Memory files) | 利用者・チーム | プロジェクト共通のルール(AGENTS.md、CLAUDE.md、GEMINI.md) |
| ③ 利用者のメッセージ(User messages) | その場の作業者 | 「この文章を書き直して」「バグを修正して」といった具体的な命令 |
指示ファイルの届き方は製品によって異なります。Claude Code は CLAUDE.md をシステムプロンプトの直後に「利用者のメッセージ」として送り、Antigravity はルールを「システムプロンプト」の枠内に結合して送ります(各製品の仕様)。
どの指示が優先されるのか?(指示が食い違ったとき)
OpenAI や Anthropic は、指示の優先順位を「書かれた位置」ではなく「送信者の役割(Role:system / developer / user)」で判定するようにモデルを訓練しています。
| 出どころ | 公式ドキュメントや研究の記述 |
|---|---|
| OpenAI(Model Spec) | 指示が食い違ったときの優先順位は、役割(developer > user)で決まる OpenAI Model Spec(2026-08-18)原文roles determine the authority of instructions in the case of conflicts.出典を開く確認 2026-10-18 |
| Anthropic | 会話の途中に挿入された system ロールのメッセージも、一般利用者の文ではなく最上位の指示として扱う Claude API Docs(mid-conversation-system-messages)原文the new instruction is still applied as a system instruction rather than as ordinary user text.出典を開く確認 2026-10-18 |
| 研究(2024 年) | 指示の優先順位を訓練する前のモデルは、system の指示を、信頼できない利用者や第三者の文と同じ優先度で扱いがちだった arXiv 2404.13208原文LLMs often consider system prompts (e.g., text from an application developer) to be the same priority as text from untrusted users and third parties.出典を開く確認 2026-10-18 |
読者はどう解釈し、どう対策すべきか?
「システムプロンプトや指示ファイルに書いておけば、ユーザーが何を指示しても安全」とは言えません。
System と User に、長さや大文字などの書式で食い違う指示を与えた研究では、最もよいモデルの GPT-4o でも、単純な指示で System 側の指示に従った割合は 63.8% でした。 出典を開く確認 2026-10-18arXiv 2502.15851原文
GPT4o with 63.8% average R1 performs the best on simple instructions, and Claude 3.5 Sonnet with 47.5% performs the best on rich-context instructions
読者にとっての教訓は次のとおりです。
- System の指示でも、食い違う指示があると、従われるとは限らない。
- そもそも、システムプロンプトや指示ファイルの指示と、メッセージの指示を食い違わせない。
指示は資料の前と後のどちらに書くのか?
長い資料を渡して作業を命令するとき、資料と指示のどちらを先に書くべきでしょうか。
| 提供元 | 公式ガイドラインの推奨 |
|---|---|
| Anthropic | 長い参考資料を先頭に置き、質問・指示・出力例を最後に書く Claude API Docs(claude-prompting-best-practices)原文Place your long documents and inputs near the top of your prompt, above your query, instructions, and examples. This improves performance across all models.出典を開く確認 2026-10-18 |
ほとんどの場合、質問(query / question)をプロンプトの最後に置くことを推奨する Gemini API Docs(long-context)原文In most cases, especially if the total context is long, the model's performance will be better if you put your query / question at the end of the prompt (after all the other context).出典を開く確認 2026-10-18 |
|
| OpenAI(GPT-4.1 手引き) | 指示を資料の前と後の両方に書く(挟み込み)。1 回だけ書くなら資料の前 OpenAI Docs(gpt4-1_prompting_guide)原文ideally place your instructions at both the beginning and end of the provided context, as we found this to perform better than only above or below. If you'd prefer to only have your instructions once, then above the provided context works better than below.出典を開く確認 2026-10-18 |
IT連携マップ編集部の検証:小さいモデルでだけ、並べ方で差が出た
IT連携マップ編集部は 2026 年 10 月に、「資料」「命令」(AI にしてほしいことそのもの。例: 書き直してください)「書き方の指示」(やり方の手順や方針。例: です・ます調で書く)の並び順を 8 通りに変え、白書の文章の書き直しを各モデルに頼みました(書き方の指示 8 項目に従ったかを機械で採点)。
| モデル | 並び順による差 | この試験で分かったこと |
|---|---|---|
| デフォルトモデル (Claude Fable 5.1 / Gemini 4 Argon) |
差は出なかった(試した並べ方はすべて 8 点) | 資料の外に書いた指示には、どの並べ方でも全部従った |
| 小さいモデル (Claude Haiku 5.5) |
差が出た(並び順によって 5.0 点〜8.0 点) | 資料を先頭に置いた並びが低く、命令か指示を資料より前に書いた並びが高かった |
読者はどう並べるべきか?
デフォルトモデルを使っているなら、資料の外に書いた指示の並び順はあまり気にしなくてよい、というのがこの試験の結果です。ただし、コストや速度のために Claude Haiku や Gemini Flash などの小さいモデルを使う場面もあります。
この試験(資料全体の書き直し)では、Claude Haiku 5.5 は「命令→資料→指示」と「指示→命令→資料」で、短い資料でも長い資料でも 7.7 点以上でした。資料を先頭に置いた 2 つの並び(資料→命令→指示、資料→指示→命令)は平均 6.5 点でした。3 社の手引きの勧めは、資料について質問に答える場面のものです。並べ方を変えると結果が変わるのは小さいモデルなので、小さいモデルを使うときは、自分の課題で並べ方を試してください(AI が指示に従わないとき)。
指示はいくつまで書いてよいのか?
指示の数は、少ないほど守られやすくなります。
単純な指示であっても、一度に 500 個の条件をまとめて渡した研究では、最高性能のモデルであっても指示を守れた割合は 68% まで低下しました。 出典を開く確認 2026-10-18arXiv 2507.11538原文
We evaluate 20 state-of-the-art models across seven major providers and find that even the best frontier models only achieve 68% accuracy at the max density of 500 instructions.
| 実務のコツ | 理由と効果 |
|---|---|
| 指示は絞り込み、具体的に書く | 指示の総数が増えるほど、途中の条件を忘れたり無視したりする確率が上がる |
| 手順やコマンドまで具体化する | 「丁寧に検証せよ」という抽象文より、「まず test コマンドを実行し、結果を確認せよ」と具体的な手順を書く方がモデルは従う(指示層の解説) |
| 強調表現(「絶対に」「必ず」)を多用しない | Anthropic は、新しいモデルは system の指示によく反応すると書き、Claude API Docs(claude-prompting-best-practices)原文Claude Opus 4.5 and Claude Opus 4.6 are also more responsive to the system prompt than previous models.出典を開く確認 2026-10-18 Claude API Docs(claude-prompting-best-practices)原文The fix is to dial back any aggressive language.出典を開く確認 2026-10-18 |
ここから先は調査の詳細です(約 2 分)。上のカードだけで決められます。調べた 1 件ずつの記録は IT連携マップ に、出典 URL と調査日つきで公開しています。
調査の詳細
指示の届き方と優先順位の検証にあたっては、OpenAI、Anthropic、Google の公式ドキュメントと論文を原文で読みました。資料と指示の順序比較実験は、2026 年 10 月に Claude Code 2.1.302 および Antigravity CLI 1.4.2 の実機環境上で実施しました。
参照した研究の背景
| 研究 | 計測された内容 | 実務への適用時の注意点 |
|---|---|---|
| 63.8% の実験(2025 年) | System と User で大文字・文字数などの食い違う指示を与え、System 側の指示に従った割合 | 6 つのモデル。2024〜2025 年の版。指示が食い違わない場合の数ではない |
| 68% の実験(2025 年) | 「特定の単語を含める」という単純指示を最大 500 個与えたときの遵守率 | 条件が極端に多い場合の飽和現象を示している |
| 先頭トークンへの注意(2023 年) | 入力の先頭数トークンに注意(Attention)が集中する現象(Attention Sink) arXiv 2309.17453原文This suggests that the absolute position of the starting tokens, rather than their semantic value, holds greater significance.出典を開く確認 2026-10-18 |
トランスフォーマーの構造上の特性であり、「先頭にある文の内容を重要視している」わけではない点に注意 |
同じ指示を 2 回繰り返すと効果はあるか?
「同じプロンプトを前後に 2 回続けて書くと精度が上がる」という説があります。推論(Thinking / Reasoning)機能を切った 7 つのモデルを対象にした研究では、70 のタスク中 47 で成績が向上し、悪化したケースはありませんでした。ただし同じ研究は、推論を有効にすると、繰り返しの効果はほぼ無い〜わずかに良い程度だと書いています。 出典を開く確認 2026-10-18arXiv 2512.14982原文
When reasoning is enabled, prompt repetition is neutral to slightly positive
IT連携マップ編集部が行った長文書き直し試験でも、指示と資料を 2 回繰り返した並び(CABCAB)を試したところ、小さいモデル(Claude Haiku 5.5)の長い資料では、入力トークンが約 2 倍(40,244 → 76,801 トークン)になり、点は 5.0 点と 8 通りで最も低くなりました(AI が指示に従わないときの詳細)。同じ指示を何度も繰り返すより、1 回、資料の外に書く方が、トークンも少なく済みます。